「スタイリングは 正しさよりも、自分らしさ」というメッセージのもと、もっと自由に自分らしさを楽しんでほしいという想いを込めた新生TANTO。
今回、ナカノ スタイリング タントシリーズのリニューアルプロモーションでモデルを務めたのは、PRADA(プラダ)の2021年春夏ウィメンズ・コレクションで鮮烈なデビューを果たしたTAIRA(タイラ)さんです。
ウィメンズ、メンズの垣根を超えた活躍で注目を集める新世代の表現者、TAIRAさんに、ファッションやヘアメイクの楽しみ方、自分らしさと向き合うことの意味について伺いました。
小さい頃から興味はあった方だと思います。すごくセンシティブな子どもで、周囲からどう見られているかいつも気になっていたんですよね。まわりと同調しなきゃというプレッシャーも感じながら、いわゆる“男らしく”は全然なくて、よく女の子に間違われたし、声も高くて、自分に自信がなかった。周囲に認められるために何ができるかと考えたとき、美術の分野とか、美的感覚みたいなものは得意だったので、おしゃれをすることで精神的に武装していたんだと思います。
一方で、まだ自分というものがよくわかっていないなかで、自分探しのために利用していたツールでもありました。ファッションは、ポジティブに楽しみながらいろんな自分を見せてくれる存在だったので。
ヘアスタイルはコロコロ変えていましたね。しっくりくる髪型がなかったっていうのかな?ファッションと同じで、いろんな髪型を試して、いろんな自分を見てみて、飽きたらまた変えて、というのを繰り返していました。いまは仕事の関係でしばらくロングヘア。普段はプロの方にヘアメイクをしていただくことがほとんどなので、自分ではあまりメイクやスタイリングをしないんです。
でも、コロナ禍を通してちょっとおしゃれに対する価値観が変わったというか。それまでは誰かのためにおしゃれをするという感覚だったのが、誰に会うわけでもないけどちょっと公園まで出かける、そういうときに自分のためにするおしゃれもいいなと思えてきて。メイクやスタイリングって、まわりの目を気にしてやることが多いけど、やりたいときは思い切り楽しめばいいし、作り込まなくていいと思えばナチュラルでいい。その人なりの楽しみ方があるべきだと思います。
大学に入ってカルチュラル・スタディーズという学問に出会ったことが大きかったと思います。学ぶことで自分自身のことを知ることができたし、社会のことも知ることができた。代表的なものに「パフォーマティビティ」という理論があるのですが、これは女性・男性の違いが生まれつき生物学的に決定しているのではなく、社会的なふるまいによって再生産され続けているという考え方。それを聞いたときに、パーッと目の前がひらけたような気分になって。子どもの頃からのモヤモヤが説明できるようになったことがすごく大きな経験になりました。
これって性別のことだけじゃないし、人種とか自分のアイデンティティを形成しているすべての要素に応用できることなんですよね。自分を知るということは、すごく世界が広がることなんだと思います。
ひとつ言えることは、モヤモヤを抱えているのは自分だけじゃないということ。どんなに自信がありそうに見える人も、きっと何かしらのコンプレックスはあるし、それが自然なことだと思います。こんなふうに言っている私だって、実は全然自分のことがわかってない。そういう“流動的なもの”が自分である、というふうに捉えています。
だから、ネガティブに考えるのではなくて、モヤモヤがあることを楽しんでほしい。だって、そのモヤモヤについて考えることができる分、伸び代があるっていうことだから。私は、どんなに歳をとってもずっと知らないことがあり続けると思っていて。これについてはもう何でも知っている、なんて思った瞬間、それ以上成長できないと思うんですよね。常に無知であると自覚して、あたらしい気づきを重ねていくことができる。それってとても幸せなことだと思います。